ふらっと立ち寄った85パーセントの人たちが満足し、友達に薦めたい、また読みたい、孫に朗読して聞かせたい、読むと髪の毛が増えた、肩こりが取れたと思えるような日記を目指して酒にタバコ、女性にギャンブルにと明け暮れる日々を綴ります。
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幼い頃、夏は暑くて嫌いでした。冬は寒いので嫌いでした。
家にいても仕方がないので外で遊んでいましたが、とにかく嫌々といった感じで外で遊んでいました。そのような我輩に光を与えたのが、従兄弟が夏休みに持ってきた家庭用ゲーム機でした。
我輩の家は親のメディア・リテラシーが大変低く、どこで仕入れた情報か知らないけれど、テレビゲームをし過ぎると、脳がどうかなるとでも思っていた節があります。今思えば、頭が爆発するぐらいのことは思っていたのではないかと振り返ります。
テレビゲームの思い出が幾つかありますが、それを所々会話形式で語ってみようと思います。まったく記憶がない市井の民の方には申し訳ないですが、何となく妄想を膨らませてお読みください。
ドラゴンクエストⅢ――。
いわずと知れた名作です。当時、徹夜で並んでソフトを買い求める映像がニュースとして流れていたのを覚えています。今から思えば何が楽しかったのだろうと思うのですが、友達の家で友達がプレイするドラゴンクエストというロールプレイングゲームを延々と眺めていました。次々と襲いかかってくるモンスターを倒していく様子を何時間も何時間も眺めていると日が暮れました。他人がプレイするロールプレイングゲームを眺めていて何が楽しかったのか今の我輩には分かりませんが、当時の我輩は目をキラキラさせながら友達がプレイするゲーム画面を眺めていたのです。そのうちに我輩は一つの疑問を口にしました
「ねえ、何で名前が『ひてあき』なの?」
我輩は尋ねました。
「名前に点々(濁点)とか丸(半濁点)を使うと一文字として数えられるんだよ。全部で四文字しか使えないから仕方ないんだよ」
「そうなの?」
「俺だって嫌だよ。ひてあき、とか格好悪いよ。でも、仕方がないんだよ」
「だったら、無理矢理に『ひてあき』とかにしなくて『ひで』でよくない?」
「え?」
「普段、ひでちゃんとか呼ばれてるんだからさ」
「……」
彼は沈黙し、黙々とモンスターを退治し続けました。
後日、我輩、ロールプレイングゲームというものを理解しないまま、ドラゴンクエストⅢを買いました。よく分からないまま始めたせいか、純粋すぎたせいか、宇宙意思の陰謀か分かりませんが、まったくロールプレイングゲームの進め方というものを把握できていないことで悲劇が巻き起こりました。期待に胸を膨らませ、我輩は名前を入力し『勇者こういち』として冒険の旅に出発しました。シナリオを一つずつクリアしていくという当たり前の概念がありません。アリアハンという城下町から冒険に出た後は、すぐ北にある町、さらに先にある洞窟を行ったりきたりしながら、二ヶ月間を過ごしました。何も分からない我輩は、ずっとスライムとカラスとカエルとウサギと戯れていました。そうこうしているとレベルが20を超えました。どうしてそのような勘違いをしたのか今でも謎ですが、我輩の脳の中では、かつて『勇者ひてあき』が、この辺で『ゾーマ』と呼ばれる魔王と戦っていた記憶がある、という理屈でアリアハンとその先の町の中間地点をコントローラーが壊れるほど往復し続けました。
ある日、我輩の家に『勇者ひてあき』が遊びに来ました。我輩は、どこを探してもゾーマがいないことを告げました。かつて勇者ひてあきが戦っていたゾーマがこの辺りにいた気がするのだけど、ゾーマが現れないということを訴えました。すると、勇者ひてあきは言いました。
「アリアハンの草原にゾーマはいないよ」と。
我輩、そこで自分がロールプレイングゲームというものを理解していないということを理解したのです。それから勇者ひてあきに導かれるままルイーダの酒場と呼ばれる場所で戦士と魔法使いと僧侶という仲間を得て、爆弾を手に入れ、洞窟の壁を破壊し、新たなる世界へと旅立ったのです。あのとき、勇者ひてあきが我が家に遊びに来なかったら、我輩、あれから20年ほど経った今でもアリアハンの草原でゾーマを探していたかもしれません。危ないところです。ありがとう、勇者ひてあき。友達だったはずなのに、苗字も顔も思い出せないけれど、君のことは忘れないよ。
続く――。
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