我輩、普段は巨大ロボットで移動してるのですが、たまたま100年に一度のメンテナンスということで、愛機ユウショクガヤキソバッテフザケルンジャアナイヨカアチャン号を成層圏で待機しているステルス・コロニーに預けてジャパン・レールウェイに乗った。
ジャパン・レールウェイとは通称JRと呼ばれ、国鉄の民営化に伴い分離発足した鉄道会社7社の総称である。一般的にJRと私鉄は区別され、民営化されているものの元国鉄である立場から私鉄とは呼ばれない。また日本民間鉄道協会に所属していない。など、ある程度のジャパン・レールウェイの知識と操縦方法を催眠学習で覚え、キップというパスを購入し、いざ乗り込んでみると操縦士は別にいることに驚いた。
途中で宇宙空間を経由するかもしれないと勘違いしていた我輩は、前もって用意していた宇宙服と対異星人用の武器を仕舞い、座席に腰を降ろした。座ってすぐに気づいたことは、半身ほどズレて目の前にいる女性の下着が丸見えだということだった。女性は若く美しかった。眠っているのかは分からないが目を閉じて少し俯いていた。我輩は、どこを見ていいものかと視線を泳がせた。泳がせていると我輩の隣の男性が、目の前の女性の下着を見ていることに気づいた。見ているという次元を超えていた。ガン見だった。背もたれに背を預けず、やや前のめりの体勢になり、とにかくガン見だった。おお、こいつガン見だぜ、と思いつつ、下を向いたり、上を向いたり、右を向いたり、左を向いたりした。どうにも視点が定まらない我輩は困った。
困った我輩は、下着をガン見し続ける男性をチラ見し続けるという着地点を得た。ずっと男性の横顔を眺め続けた。我輩は我輩、下着、男性、この歪な3角形を魔のバミューダ・トライアングルと呼んだ。この三角形に別の乗客が入り込むと、ふっと行方不明になるのではないかと不安を覚えた。我輩に横顔を見られていることに気づいているのか気づいていないのかは分からないが、男性は我輩が駅で降りるまで下着を見続けていた。
ジャパン・レールウェイを降り、終わる夏の日差しに照らされながら、今年は蝉があまり鳴いていなかったなあ、と我輩は思った。
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