ゲームの話ですが、もう『聖蹟』とまで呼べる思い出に残っているのは、あと一つだけです。
今回は短くなりますが、昔、ファミリーコンピューターの時代、あの家庭用ゲーム黎明期において我輩は子供でした。子供の我輩の小さな頭の中には小さな頭脳と少ない知識と経験だけがありました。
あるゲームをしていたときです。登場人物が最初から持っているアイテムに『ロケット』というものがありました。当時まだ我輩のゲームレベルは『アリアハンの草原でゾーマを探すレベル』でした。まったくもってスーパーのマリオのブラザーズ的なゲーム以外のゲームを理解していない頭脳でした。一切、小難しい感じのゲームを理解していませんでした。そのような折りに買ったゲームが何というタイトルのゲームか覚えていませんが、始まってすぐに行き詰まりました。ゲームを読み解く工程が分からないのです。電源を入れてスタートしたあとは闇雲にウロウロするだけでした。無意味な時間を苛々しながら過ごします。
今ならば、今の聡明な我輩ならば、今の手を翳すと神秘のパワーで涸れた井戸を蜂蜜で満たしたり満たせなかったりするほどの我輩ならば、しっかり理解できているのですが、当時の我輩は本当に幼く、そして愚かでした。タイトルも思い出せないゲームをやっていて、すぐに行き詰まり、こともあろうか我輩、そのゲームの中で『中庭』と呼ばれる場所で、ずっとずっと何回も何回も『ロケット』をアイテムとして使いました。この建物を脱出するには、このロケットを使って脱出するに違いない、と何度も何度も……。
ここで使っても意味がない、というような注意が画面に出ます。それでも諦めきれずに、ウロウロして『ロケット』を使って、中庭を出て、戻って、一人時間差攻撃のように『ロケット』を使って、ここで使っても意味がない、という注意をされるという数日を経て、このゲームは我輩には向いていないと悟り、苦々しい思いで近所の中古ゲーム店で売りました。それから数年後の話です。
我輩は自宅でテレビを観ていました。度忘れしていたことを度忘れしていて、何かの拍子にまったく関係ないことであるにも関わらず、まるで天啓のように思い出すことがありますが、パッと頭に閃きました。発明家にでもなったかのような気分です。細い糸を手繰り寄せるように、かつて名前も思い出せないゲームの中の建物の『中庭』で必死になって使っていた『ロケット』というのは、人が乗り込むようなものではなく、ペンダントみたいな中に小さな写真とかを入れる首飾りのことではなかろうか?と唐突に降って湧いて閃きました。
あいたー、です。我輩、あいたー、と思いました。
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